犬ブルセラカニス感染症

ブリーダーさんによく見てもらいたい内容となっています。

まずブルセラ感染症には、下記の4種類があります。

  • Brucella. abortus(ブルセラ・アボルタス)牛に感染。
  • Brucella. suis (ブルセラ スイス)豚に感染
  • Brucella. melitensis(ブルセラ メリテンシス)羊に感染。
  • Brucela. canis(ブルセラ カニス)犬に感染

今日はブルセラ・カニスについて進めていきます。ブルセラ症集団発生などのニュースなどでご存知のように近年しばしば繁殖施設や犬を多数取り扱っている施設で発生しています。これはほんの氷山の一角ではないかというのが本記事の趣旨です。以下に理由を述べています。

  1. 感染しても通常の生活に支障をきたす症状が現れない
  2. 感染していても必ず不妊や流産などの症状を引き起こすとは限らない
  3. パルボやジステンパーなどに比べると感染力が弱い
  4. 交配で感染する可能性が高い
  5. 感染力が弱いので1頭でも保菌犬がいればゆっくりと飼育している犬に広がっていく、

ときには同じ屋根の下でも数年かけてじっくり広がっていく事も考えられます。

そして一番驚くべきことが国内の犬のうち5%がブルセラ菌を保有しているという事です。私は恥ずかしながら学会のときに初めてこの数字を耳にしました。ブルセラ症に対する危機意識は以前より持っていましたが予想をはるかに上回る数字に戦々恐々となってしまいました。この数字は20頭に1頭がブルセラ保菌犬であるということです。つまり20頭以上所有しているもしくは今までに20頭以上飼育したことがある施設ではブルセラ菌がすでに入っている可能性があるということです。しかしブルセラ菌がいても上記①~④の理由で気が付かないことが多いのではないかと思います。おそらくブリーダーがブルセラ症と聞くとブルセラがくれば廃業だと考えている方が大半だと思います。事実ここ数年でブルセラ症が発生した施設はブリーダーに限らず廃業に追いやられています。

しかしブルセラ集団感染を起こしている施設はまだまだ水面下に多数存在していると推測できます。ではなぜ水面下なのか?それは不妊程度ではブルセラを疑わない方が多いのとパルボやジステンパーに比べれば目に見える被害が把握しにくいことがあると思います。パルボやジステンパーが入ればパタパタと犬が死んでいくので相当危機意識を強く持たれている方も少なくないと思います。しかしブルセラはワクチンや有効な治療法も乏しくパルボやジステンパーと同等かそれ以上に恐ろしい感染症だという認識を持つ必要があります。

私もブルセラ症に対する認識は人間でいうエイズに似たようなイメージを持っていました。これはエイズに対しても今や古い考え方ですが、「私には関係ないだろう、感染すれば終わり」というようなかなり感染する確率は低いが怖い病気であるというイメージです。エイズは国内ではまだ患者数は0.0001%程度ですがブルセラは5%です。危険性はエイズに感染する確率の5万倍です。10頭所有しているブリーダーでは50万倍です。怖い病気だけど私には関係ないわと言っていられない事が分かって頂けたと思います。

私もブルセラ症に対する認識は人間でいうエイズに似たようなイメージを持っていました。これはエイズに対しても今や古い考え方ですが、「私には関係ないだろう、感染すれば終わり」というようなかなり感染する確率は低いが怖い病気であるというイメージです。エイズは国内ではまだ患者数は0.0001%程度ですがブルセラは5%です。危険性はエイズに感染する確率の5万倍です。10頭所有しているブリーダーでは50万倍です。怖い病気だけど私には関係ないわと言っていられない事が分かって頂けたと思います。

ではブルセラをどう防ぐか?先月のJKCの会報にはなるべく清潔な犬舎から犬を購入しましょうとありましたが、確かに清潔にしていることは大切ですが、交配で感染しますので環境汚染だけではありません。感染源は尿や精液など泌尿器系から多く菌が排出され経口もしくは交尾によって感染します。したがいましてブルセラを保菌している不妊の犬などに受胎しないからと何度も交配を繰り返すと種雄に感染しやがて種雄が媒体となり他へ感染が拡大していきます。

当方では2007年からこれらの感染症を危惧し100%人工授精を行ってきましたが、複数の犬の接触飼育を行ってきました。これは感染予防の観点からは危険です。感染の危険度は①交尾 ②複数頭の接触飼育 ③環境汚染及び感染症への知識の希薄となると思います。

中には外国からの輸入犬で検疫を受けているから大丈夫と思っている方もおられるかと思いますが、これは間違いで検疫ではブルセラ保菌犬でも100%スルーされます。血清抗体値の測定は狂犬病だけでブルセラ抗体値は検疫では調べません。またアメリカのブルセラ保菌率は8%と日本より高いのでより注意が必要です。

以上の事から私のところは大丈夫だろうと根拠なく思い込むことは非常に危険です。5%という数字であれば常にブルセラを疑い注意する気持ちが大切です。

れではどうすればいいのでしょうか。答えは全頭検査しかありません。検査を行わないということは廃業を賭けて大丈夫だと思い込むにはあまりにもリスクの高い無謀なことだということが前述したことで分かって頂けたと思います。

現在行われているブルセラの診断方法は血清の抗体価を測定する方法で、試験管凝集法で行われています。これは抗原に抗体が結合する性質を利用して血清中の抗体量を測定する方法です。血清の希釈倍率160倍以上でも反応が認められたら陽性と定義しています。

ブルセラカニス

血清中の抗体とはこのような形をしており、Y字の先端部分で抗原をキャッチします。抗原(すなわち今回の場合はブルセラ・カニス菌)が体内に侵入すれば体内でその抗原に対する抗体が作られます。逆に言えばブルセラ菌の侵入(感染)が無ければブルセラ抗体は体内に無いわけです。抗体があるということは感染したことがあるもしくは感染していることを示し、抗体が無いということは感染していないことを示します。私は試験管凝集法ではなくマイクロプレート凝集法を用いることにしました。詳しくは昨年の獣医師会の会報に掲載されていましたのでリンクを貼っておきます。

ブルセラ・カニス,マイクロプレート凝集法

抗体は抗原と結合して架橋しますので、希釈した血清内に抗体があればプレート中の抗原と反応して凝集反応が見られます。

マイクロプレートを使う凝集反応テストでは凝集が分かりやすいようにあらかじめ染色液を少量入れておく必要がありますがその他は試験管凝集法と変わりません。血清と試薬の使用量が少量のため非常に経済的で一度に多くの検体を取り扱える利点があります。獣医さんに頼んでも検査機関に外注しますので、1検体5000円~ととても高額ですが自分でやる分には1検体につき数十円で出来ます。またインキュベートして24時間後に結果が出ますのですばやい対応が可能になります。

こちらの診断用試薬では陰性の場合、血清希釈濃度20倍でも反応しないと定義されていますが、検査機関の検査報告では160倍を超えた場合のみ陽性として報告されます。つまり20倍~80倍までは疑陽性となり検査結果としては陰性として扱われることもあります。この範囲で陰性として報告されるのか疑陽性として報告されるのかは検査機関によって異なりますので必ず確認はしたほうがいいでしょう。

20倍~80倍までの幅については溶血すると陽性反応が出やすくなることや緩衝液の希釈倍率も微妙に不安定だったりすることがあるためだと思われますが、その辺りがきちんと出来ていれば疑陽性反応が出たということは過去に感染した可能性があるか感染初期だということが考えられます。完全に陰性であれば20倍でも凝集(陽性反応)しないので厳しく見極めていきたいと思います。

たとえ疑陽性反応か陽性反応が出たとしても大阪の集団ブルセラ発生のときのように陽性犬殺処分は絶対におこなってほしくないと思います。感染力の弱さや抗生物質が有効なことから隔離と治療で乗り越えられます。しかし繁殖はやめておいた方が無難だと思います。このような悲劇を繰り返さない為にも全頭検査と繁殖者全員がしっかりとした感染症に対する知識を持つことが大切だと思います。追々、陽性犬に出会ったときは抗生剤の感受性試験を行い陰性に転換する試験を行いたいと思います。

繰り返しになりますが20頭に1頭はブルセラ菌を保有しているのだから自分は大丈夫だという意識を捨てること!!統計的に見れば20頭以上所有しているかもしくは20頭以上の犬を今までに育ててきた場合、ブルセラ菌を触っていることになりますのですでに犬達に広がっているかも知れません。症状が出ていないから大丈夫ではなく物理的に陰性を常に把握することが大切!!ブルセラ保有犬は必ずしも環境の悪い犬舎で育った犬とは限らない。購入した犬がブルセラ菌を保有しているかいないかはクジのような物です。廃業を賭けて5%のブルセラクジを引き続けない自信はありますか?

検査をきちんとすればその犬舎はブルセラの発生が0%と証明することが出来ます。もちろん譲り受けた犬が陽性の場合は返却対象となります。交配は以前からそうしていましたが、常に感染症に注意を払い交配を人工授精で行う事で接触をなくしリスクをなくします。ブルセラによる廃業リスクについても0%にすることが出来ます。

それからやはり人工授精の安全性は高いと思います。こちらでは2005年からこれらの感染症の蔓延を防止する目的で、すべて人工授精に切り替えていますが、交配料をいただき交配を行う者の責任として今後はブルセラ陰性証明などが必要不可欠になってくると思われます。人工授精が出来ない場合は、雌犬のブルセラ陰性証明を要求しているところもありますが、やはり疑陽性などの問題もあり完全に感染を予防するには難しい事でもありますので、安全と確実な交配を行うためにも人工授精は必須技能といえると思います。

最後に試験を行う場合は常に陽性検体で陽性反応が出ることを確認して行う必要があります。ブルセラ・カニスの陽性抗体(ポジティブコントロール)は市販されていないのでマウスなどでこちらで作る必要があります。

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